go slow
2019.12.14
昨晩、自宅にいる父から電話がかかってきた。
「大丈夫?」
最近お見舞いに行けていない。
父の方が大変なのに、心配されてしまう始末。
先日、出勤前にシャワーを浴びようとして、急に腰が痛みだして立っていることが辛くなり、ベッドに倒れ込んだ。
手に汗を握り、痛みがやむまで唸っていた、と後で気づいた。
わたしは普段、驚いても怪我をしても声を上げない。
少しして、腰と臀部と左足の太ももがガチガチに固まっていることに気づいたので、手の甲でその辺りをマッサージすると、痛みが少し和らいだ気がした。
とりあえず出勤予定の職場に連絡を入れ、もう一つの職場にも、土日の出勤が出来ないかもしれないことを伝える。
この日は午後の診療をしていない病院が多く、数年前に行った整形外科もお休みだった。
市販の痛み止めが効いたので、その日はPC作業をしたり、軽くご飯を作ったりして過ごしていたけれど、食器を取ろうとしてふと違和感があることに気づいた。
しゃがんだ姿勢から立ち上がろうとすると、またしゃがんでしまう。
軸足の左足が、体重を支えられていなかった。
軸足ではない方で立ち上がった。
それが何度か続いた。
皮膚の感覚も、そのとき布の上から触っているような感覚になっていて、軽く知覚麻痺が起こっていた。
夜になり、また少し左足がうずうずと痛み出したけれど、翌日病院へ行く予定だったので痛み止めは飲まずに寝た。
整形外科にはタクシーで向かった。
レントゲンを撮り、先生は、これで見る限りは、〇番の骨が少し寄っていますが脊椎はきれいですと仰ってくれたけれど、痛みが出ている原因を調べるためにMRIを撮りましょうと言われ、画像センターにまたタクシーで向かった。
MRIを撮る方が気さくに話しかけてくれたので、「画像はこの部分(太もも)辺りまで撮りますか?」と聞いてみると、「腰しか撮らないですよ」と言われたけれど、症状を伝えると、「麻痺などが起こるのは全て神経なので、大丈夫ですよ」と言われた。
大丈夫、って…?と思ったけれど、わたしが何を心配しているのかわかっているようだったので、それ以上は聞かなかった。
そしてまた、タクシーでもとの整形外科へ。
さきほど撮ってもらった画像が入ったCD-ROMを渡して見てもらうと、横から見た図で少し寄っていた腰椎と腰椎のあいだから、タラっとゼリーのように何かがこぼれそうになっていた。
それが、椎間板だった。
説明を受け、お時間があれば今日から治療していきましょうと言われ、1時間待って治療を始めた。
ブロック注射と飲み薬を使う ―保存療法― というものだった。
先生から、ベッドの上で横向きになり海老のように丸くなってください、と。
左足をうまく引き上げられないので小さく丸くなるのが難しく、その姿勢のまま注射を打たれたけれど、神経を探ったらしく痛みが走った。
その時点で手には大汗をかいて、歯をすごく食いしばっていたようで、翌日軽い顎関節症が出て、午前中は持病の耳管開放症が続いた。
「横を向いたまま10分、そのあと自由な姿勢で20分そのままで居ていただきますね」ということで動かずに10分が経った頃、助手の方が「もう自由な姿勢でいいですよ」と言ってくれたけれど、なんとなく動く気がせずにそのままにしていると、足が動かないことに気がついた。
触ってみると、何も感じない。
唯一、下側にしていた左足の指先だけが動き、右足はというと、左の足の上にブヨンと重たく乗っかっていただけだった。
20分経っても動く様子がなく、助手の方が「初めての治療でそうなると怖いと思いますが、麻酔が効いているのでなるべく動け動けと指示を送って少しずつ動かしていってください」と言ってくれた。
先生は、「初回で少し薬を多めに入れたのと、右足には症状がなかったので効きすぎたんだと思います」と言った。
わたしもそれに合わせて、「それならゆっくり動かせるようにしていきます」と伝えた。
左足は少しずつ動くようになってきたものの、30分40分経っても右足はブヨンブヨンとただの肉の塊のようで、神経が麻痺するとこんなにも人の体は柔らかくて、そして今ここで何かが起こって骨折をしたりしても、痛みも何も感じずにそのままなんだろうなと思うと、動かない恐怖以上の恐怖が襲ってきた。
もしもこの足がこのままだったら―
人が考えうる全てのことをこのとき考え、頭をよぎった。
そして50分ほど経ったころ、さっきまで動かなかった膝がカクンカクンと曲げられるようになり(指示を送っているから動いているのに、知覚的には動いている感覚は全くなかった)、
そこから次第に指先が曲がるようになり、まだ不審な動きをする右足を、ベッドにこすりつけたり上げたりしながら、無理かなと思いつつもベッドから足を下ろしてみた。
この時すでに1時間強。
右足はまだ感覚が戻っていなかったけれど、立つイメージをするためにバタ足をしては床を押すという動作を繰り返していき、焦りから1度立ってみると、ストンとまたベッドに座ってしまった。
そんなことを繰り返して、その場足踏みができるようになり、助手と先生の前で歩いて見せた。
頭には「クララが立った!」というハイジの声が何度も再生されていた。
「まだふらつきがありますね」と言われたけれど、両ひざを曲げたり体勢を戻したりしてアピールし、助手の方が杖代わりにと貸してくれた傘を持って、ゆっくり帰宅した。
翌日は、注射の効果で左足の痛みはなくなっていて、下手に神経を圧迫しないように、同じ姿勢をしないように立ったり座ったりしながら家で作業を。
故障していたノートパソコンも少し前に帰還していて、テーブルでも床でも作業できるのでよかった。
買い出しは、朝からネットスーパーで注文し、3時ごろに配達された。
元気なので、ケーキの材料なんかも注文してしまった。
週1の事務の仕事は今週お休みさせてもらい、スーパーマリオブザラーズのような仲居仕事は、しばらくお休みをいただくことにした。
左足に残る軽い麻痺は、感覚を覚えて歩き方を工夫したり、筋力を衰えさせなければ現状より少しはマシになるんじゃないかと考えている。
自主禁酒6日目、10mlだけ梅酒を飲んだ。
治療直後はたくさんのことが頭をよぎって怖かったけれど、今は天からの声だと思っていろんな意味でゆっくり。
歩くのが早いとよく言われてきたけれど、なんとなく、これくらいのヨチヨチでいいから大地を踏みしめて、歩んで行ったらいいのかも知れないな。
それにしても、ブロック注射のトラウマの野郎め~~~!
追記(12月16日):
2回目の治療でも同量の投薬だったけれど、それによる麻痺は両足とも一切起こらずだった。
せめて、そうなるかも知れないことを事前に伝えておいてくれれば、いろんな恐怖は拭えたかも知れない~!